企業再生とは

経営とは経営環境の変化に適応させていくこと


 今日のように大不況時には、時流が激変するため、時流に適応した経営を行っていく必要があります。どのように適応していけばよいかというと、「お客様満足」の経営をすることです。
 言い換えれば、お客様の購買心理を知ることであり、お客様の心理の変化を読むことです。しかし、ニッチ市場で一番になったとしても時々刻々と経営を取り巻く環境は変化していきます。恐竜が絶滅したのは、その時代の気候風土に合わなくなったり、食料不足に対応できなかったからと言われています。恐竜に食べられるのを恐れて地下に潜った小型の動物たちは生き延びています。
 今現在は経営が低迷をしていても、時流を的確に読む努力をすれば、やがてNo.1企業、オンリーワン企業、地域一番店にのし上がることができるのです。
 経営計画においても、「お客様満足」に基づくマーケティングを展開することで、時流にあった経営をしていくことが神髄なのです。


普及率が3分の2を越えると八方敵だらけ


 営業活動には、独占商品でない限り、常に他社との競合があります。この他社との競合も、商品のライフサイクルとの関係や、市場普及率により様相が変わります。俗に成熟期といわれる、ヤマのピークに至る時期が、競合の最も熾烈な段階であり、ダンピングや押し込み販売、売上げを促進するためのインセンティブ政策などが盛んに行われます。
 市場普及率がすでに普及率は3分の2以上となっている食品、化粧品、医薬品を始め、日用雑貨や家電、自動車の多くは、すでにほとんどの顧客が購人し、利用しているものです。
 成熟期になった製品やサービスを売るには、既に持っていること、使っていること、消費していることを前提として販売行為をせねばならず、その戦略は新製品や人気商品により関心を引きつけ、少しでも多くのシェアをとることに向けられます。

 食品業界を例にとれば宣伝を増やし、販売拠点も増やし、グルメ時代を演出していつも食欲を刺激し続けるわけです。
 おかげで現代人は食べ過ぎと肥満に追い込まれ、胃腸や心臓を悪くしているが、その飽食の弊害が現れれば今度は健康食品や機能性食品、という具合に、次の健康産業が狙い目となるから、開発行為は無限に続いています。

 ライフサイクル曲線でみれば、飽和期になると、過当競争は行きつくところまで行っています。ライバルは、ヨコの同業他社に限らず、タテの垂直的な取引関係(顧客のライバル化や仕入れ先のライバル化)にも出現し、これに異業種の参入を加えれば、もはや"八方敵だらけ"といっても過言ではありません。

 企業は、大企業が必ずしも規模のメリットを追求できなくなり、資本力、社員数、店舗数、ブランドの威力といったことが、圧倒的な力とはならなくなります。

 何しろ、市場の動きが、多品種化、小量化を促し、生活様式も個別的に分かれています。大企業といえども、"力の戦略"からキメ細い"技の戦略"にシフトせざるを得なくなっています。 一般に、どの企業も自社より下位に属するライバルを狙って、陣取り合戦を挑むようになります。もし、これを迎え撃つ防衛側の立場では、注意をもって対抗し、敵の差別化作戦の裏をかく知恵と行動に出ます。
 マイケル・E・ポーターによれば、競合には、①業者間の競合、②新規参入の脅威、③代替品の出現の脅威、④顧客との条件競合 ⑤供給業者との競合 の5つの分類があります。
 こちらが何かを行おうとしている時に、他社に先を越され、せっかくの準備や努力がフイにされることも珍しくありません。自社としては油断を突かれたのであり、他社としては、先手必勝・奇襲作戦に成功したことになります。
 ある消費財メーカーで新製品の発表寸前という時、この開発情報が洩れてしまい、他社が特売に踏み切り、流通ルートに商品が目一杯押し込まれてしまったという例もあります。
 そのおかげでスタートでつまずき、その後遺症がしばらく残ったそうです。後遺症程度で済めばいいのですが、最悪は倒産の憂き目に会いかねません。



企業再生の必要性


 企業再生とは、「経営不振に陥っているが、再生の可能性があり、企業再生の意欲を持つ企業に対して、経営・財務の問題点・課題を整理して、金融機関その他の関係機関と調整を図りつつ、再生計画(経営改善計画とも言う)の作成・実行の支援を行う」ことと定義できます。

 わが国でこの「企業再生」が大きくクローズアップされたのは、今から数年前頃からである。「バブル時代に不動産事業に手を出し、バブルが弾けて含み損が発生し、バランスシートが悪化して、どうにもならなくなってしまった」例が典型例です。
しかし、それだけではありません。以下のような理由、変化から窮境企業が続々と生まれています。

# バブル崩壊以後の長期に渡る不況
# リーマンショック、米国発の金融危機、世界経済の低迷、ギリシャの不安-EU安
# 規制緩和、少子高齢化
# 資産のデフレ化現象
# 人口増加頭打ち等により、競争が激化し、過剰資産、過剰雇用、過剰債務など
# 経済のグローバル化・ボーダレス化
# エネルギー危機から環境ビジネスへの転換が発生、既存事業は先細り
# 政権交代。コンクリートから人へ政策が大転換

こうした事態に対して、平成15年4月、大企業向けに「産業再生機構」が設置され、中小企業対象向けには、ほぼ同じ時期に産業活力再生特別措置法の改正により、「中小企業再生支援協議会」が全都道府県に設置されました。これ以外にも、RCC(株式会社整理回収機構)、一部都道府県、金融機関関連組織、民間コンサルタント等が企業再生に取組んできています。
 2008年は原油の高騰、食料の高騰、米国発の金融恐慌などの要因により、経済のグローバル化によって海外で活躍する日本企業に大きな影響を与え、国内産業へも波及し、未曾有の不況に突入しました。そして2010年も引き続きデフレ経済状態にあります。
 こうした状況で苦しんでいる中小企業が多く発生しており、そして今後もしばらく続くことが予想され、企業再生のコンサルティング支援が求められています。

 こうした経営環境において、これからの中小企業の再生案件はこれまでと逐次変質することが想定されます。
 これまでは、中小企業としても比較的規模の大きい中堅クラスが多かったのに対して、今後は、比較的規模の小さい企業の案件が増えると予想されます。
 これにともなって、関連金融機関、リストラの内容、専門家の役割なども相当程度変わるものと考えられます。ここで専門家とは、中小企業診断士、会計士、税理士などを指します。

 特に注目すべきは、これまでの再生で重要な課題であった事業リストラと財務リストラのウエイトが低下し、業務リストラのウエイトが高まると予想されることです。
 事業リストラと財務リストラはいわば外科手術のようなもので、技術的に確立している面が多く、その効果も比較的短期に表われることが多かったと言えます。利害関係者が業務リストラに比して少ないことも特徴です。
 これに対して、業務リストラは、いわば生活習慣病を治癒するようなもので、手法が確立されておらず、各企業の実態に応じて経験と工夫を凝らして取組む必要があります。期間を要すること、利害関係者が多いことも特徴です。



  • 最終更新:2010-03-03 12:29:21

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