農協のISO
環境保全型農業の推進
近年、農業分野においても環境保全型のシステムへの転換が課題となっている。
農業はこれまでは、自然保護的側面を有した環境調和型の産業であるとの認識が強かった。しかし、高度経済成長の時代に農薬・化学肥料に大きく依存した近代農業が普及し
地域の環境を汚染してきたことは、まぎれもない事実である。
農業分野での取り組みの背景
農業分野でのISO14001とは、国際規格ISO14001を農業分野に導入していこうとするものである。つまり、持続的社会の実現という目的に向かい、JAとその組合員の営農活動にEMSを導入し、今日の経営が直面する「脅威(リスク)」対策を図り、さらには「事業機会(ビジネスチャンス)」を創りだしていこうとするものである。まず、その取組みの背景を3つに整理してみた。
第1は、近年,農業分野においても環境保全への対応が重要な課題となってきていることである。環境保全の概念が1999年に成立した「食料・農業・農村基本法」に取り入れられ、また同年には、いわゆる農業環境三法(持続農業法、肥料取締法、家畜排せつ物法)が成立する等、循環型社会の実現に向けてその社会制度改革は着々と進んできている。
持続性の高い社会への転換の試みが開始され、農政においても農業環境政策の視点が重要視されるようになってきたのである。 また、2002年に相次いで起った無登録農薬の問題は、食の安全性におけるコンプライアンスへの取り組みという課題を各農業経営に突きつけた。
このように、環境経営やリスクマネジメントの確立等、「マネジメント」概念の導入が必要となってきており、またそれにもとつく情報公開の推進もその重要性が年々増してきている。
第2は、日本農業の衰退への対応が喫緊の課題となっていることである。
農業者の高齢化の進展や担い手の不足問題等、農業生産の主体そのものの脆弱化が進んでいる。さらに、国内農業者は、輸入農産物との価格競争において劣勢状況にある。このような現状を打破する方策が求められ、農産物の差異化、ブランド化に伴う販売促進策が探求されている。
第3は、農業経営における環境保全活動の販売戦略の可能性が模索されていることがあげられる。農業の21世紀的課題(食の安全性や環境保全)に対して、一農業経営は、具体的にどのような経営を行っていけばよいのか、そして、農業経営が生き残っていくためには、どのような戦略が有効なのか。有機JAS認証への取組みやトレーサビリティシステムの構築、J-GAP認証等の販売促進に関する有効性が検証されている。その答えを模索する1つの方法として、この農業分野へのISO14001の適用に期待がかかっている。農業経営にとって、環境保全への取組みは、事業機会(ビジネスチャンス)へと繋がっていく可能性を内包しているといってよいだろう。
JAのISO14001認証取得
農業協同組合をメインにして農業関係で、ISO14001を認証取得している
ところを調べると以下のJAで認証取得をしていることが分かりました。
- 愛知東農業協同組合 作手営農センター
- 愛知県経済農業協同組合連合会
- 愛知県経済農業協同組合連合会 米穀販売部 食糧販売課
- 熊本県果実農業協同組合連合会(JA熊本果実連)
- 熊本宇城農業協同組合(熊本県)
- 鹿児島県経済農業協同組合連合会
農業分野におけるISO9001ヘの取組み事例
農業分野において ISO9001に取り組んでいる事例がある。当社でコンサルティングさせていただいたJAの取組み事例には、長野県のJA北信州みゆき、兵庫県のJAハリマ、JAあわじ島などがある。
① JA北信州みゆきは、「やまびこしめじ」「アスパラガス」「ズッキーニ」の生産量は日本一である。「水稲」栽培も盛んでその食味の良さは多くの人に認められている。きのこ栽培を中心とした農産物の営農指導でのマネジメントシステムを構築・運用している。
② JAハリマは、「丹波黒大豆」づくりは県下屈指の特産地となっている。また、中国山系上流域の水資源を利用した「コシヒカリ」栽培や冷涼野菜は、その食味の良さと新鮮さが評価され多くの消費者から認められている。これらの農産物の営農指導と「丹波黒大豆」の食品加工工場でのマネジメントシステムを構築・運用している。
③JAあわじ島は、たまねぎ、はくさい、レタス、サニーレタス、グリーンウェーブ、キャベツ、グリーンボール、ブロッコリーなどがの特産物がある。これらの農産物の営農指導と農産物の受入・撰果・包装・保管・出荷業務でのマネジメントシステムを構築・運用している。
その他、福島県保原町のJA伊達みらいでは、「安全・安心」青果物生産宣言のスローガンのもと、同規格を2002年6月に取得し、それを活かした農薬適正指導および監査-業務の設計・提供に係る取組み策を推進している。また、和歌山県田辺市の JA紀南では梅干し等の加工事業に、静岡県静岡市のJA静岡経済連では特産物の品質管理に、それぞれ同規格を活用している。
さらに、新潟県上越市の JAえちご上越では、農協における福祉事業のサービスの質の向上を志し、同規格を導入している。なお、同JAでは、 ISO9001に加えて、営農部門(カントリーエレベーター2箇所)において ISO14001の認証も取得している。
食品関連企業においては、ISO9001と HACCP(危害分析・重要管理点方式: Hazard Analysis Critical Control Points)の統合への取組み動向も見られている。 HACCPを軸にした新たな ISO規格(食品安全マネジメントシステム:ISO22000)も発行され大手食品製造業を中心に普及しだしている。
ISO規格は、経営管理レベルでの本質的な要求事項
ISO14001やISO9001を認証取得するために、ここではその全体像を眺めておきましょう。
ISOの構築で柱となるのは、①リスクマネジメント、②コンプライアンス、③継続的改善、④情報開示の4点である。~
①「リスクマネジメント」とは、環境マネジメントシステム(EMS)では、汚染の予防であり、企業の潜在的危機への対応が求められているのである。企業はこれらのリスクに対して、いかなるセキュリティシステムを想定し、実際にそれを構築していくかが問われてくる。また、品質マネジメントシステム(QMS) では、農産物の安全責任を果たすため、残留農薬のリスクなどをマネジメントしていくことと捉えることができる。
②「コンプライアンス」とは、法規制を順守することである。環境マネジメントシステム(EMS)の構築に際し、まず各組織を取り囲む法規制を把握し、それを順守していく必要がある。それは、企業が社会的責任を果たしていくための第一歩となる。また、品質マネジメントシステム(QMS)においても、顧客満足のため、関連する法規制の順守や顧客と協定した契約内容の履行を推進していくことが求められている。
③ 環境マネジメントシステム(EMS)、品質マネジメントシステム(QMS)の「継続的改善」への取組みもその構築・運用・改善の重要な柱である。言及してきたように、EMS、QMSの不断な改善である。改善を繰り返していくことにより、常にその時代状況にマッチしたマネジメントシステムを保つことができる。またそれは、結果的に企業のコスト削減にも繋がっていくことが期待されうる。
④最後に、「情報開示」があげられる。企業の環境施策等に関するアカウンタビリティ(説明責任)を果たしていく必要がある。この情報公開については、直接、ISO14001規格において要求されているわけではないが、環境経営の観点、あるいはEMSの継続的改善のためには「情報開示」を重点的に行うべきとされている。また、品質マネジメントシステム(QMS)においても、農産物の安全性に関する情報開示はますます重要になってきている。
認証取得のメリット
ISO14001、ISO9001認証を取得することが、各JAにとってどのようなメリットがあるのだろうか。
昨今、持続的社会の実現に向けて、企業の環境保全活動の必要性が盛んに謳われている。しかしながら、企業が環境保全活動のみに偏重し本業を疎かにすることは本末転倒である。あくまでも、企業とは利益を追求する組織であることから、環境に考慮しながら持続的発展を指向する経営を行うことが求められる。そして、その持続的発展のためには、「環境」保全と「経済」性追求の両側面への対応が必要とされている。
しかしながら、経営意思決定のあらゆる場面で環境問題を意識することは、容易なことではない。そのためには、既存のマネジメントと環境情報の統合が必要となってくるし、それを支える新たなマネジメントの構築が必要となってくる。
農業協同組合(JA)にとって環境問題への対応は「脅威(リスク)」でもあり、「事業機会(ビジネスチャンス)」でもある。そして、その事業機会へのアプローチは、従来の「成長」や「利益獲得」のみに偏重した経営戦略ではありえず、あくまでも持続的社会の構築を前提にしたものでなければならない。そこで、環境マネジメントシステムの構築への取組みが求められるのである。
その具体的な一般的メリットを整理しておくと、次のようになる。
【直接的メリット】
① 経営基盤の強化、② 環境(品質)コストの削減、③ 組織の活性化、④ 情報公開の推進
直接的メリットのうち、① 経営基盤の強化としては、業務管理の適正化、コミュニケーションの円滑化、事業の積極的推進等があげられる。② 環境コストの削減として、廃棄物処理コストの抑制、資源の有効活用等がある。③ 組織の活性化は、組織体制の適正化、責任権限の明確化、専門性の付与等である。④ 情報公開の推進は、データベースの確立が容易となる事などがあげられる。
【間接的メリット】
① 社会的信用の向上、② 新規事業開発機会の創出、③ 環境汚染リスク
間接的メリットとしては、① 社会的信用の向上として、例えば、環境格付の向上、エコファンドの推進等があげられる。② 新規事業開発の機会は、環境ビジネスの創出があげられる。また、③ 環境汚染リスクの回避としては、汚染の予防、将来のリサイクルコストの最小化が期待できることがあげられる。
関連記事はこちらまで:http://tatecs.fc2web.com/JA.htm
- 最終更新:2009-10-18 16:16:31
